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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~
第10章 桜いかだ 其の参
 その時、ふいに視界がグラリと揺れた。眼の前が真っ暗な闇一色に塗り込められたのは、月が隠れてしまったせいなのか。だが、それにしては、見えるはずの周囲の景色すらも見えない。
 まるで盲(めしい)にでもなってしまったかのようだ。
―まさか、俺は眼が見えなくなったのか?
 弥助は狼狽し、忙しなく首を動かして周囲を見渡す。その中(うち)に、徐々に眼に映るものがうっすらと輪郭を取り戻し始め、少しだけ安堵する。
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