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第11章 四つめの恋花　山茶花～さざんか～　其の壱

　今となっては、千汐はかつて自分が那須屋という江戸でも一、二を争う瀬戸物問屋の娘であったこと自体が現のことではなかった―夢のように思えるのだった。
　思えば、あの頃の自分は随分と傲慢であった。何の苦労も知らず蝶よ花よと父親に溺愛されて育ち、空腹というものがこの世に存在することすら、知らなかった。望めば、すべてのものが与えられ、望むことはすぐに叶えられた。