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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~
第11章 四つめの恋花 山茶花~さざんか~ 其の壱
若い衆から受けた折檻の名残をとどめ、千汐の白い頬には今でも、醜く引き攣れたような赤い傷痕がある。とはいっても、その傷は前髪をほんの少しだけはらりと落とせば十分に隠せるし、隠している限りでは、千汐の美しさをいささかも損なうものではなかった。
かえって、その傷が千汐の美貌に凄みを与えている。が、客の中には、ふとした拍子に前髪の下から露わになった引き攣れ疵を見、ヒと小さく声を上げる者もいた。