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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~
第12章 山茶花~さざんか~ 其の弐
その随明寺の山門を出て、長い石段、通称〝息継坂〟を降りきると、門前道に至る。随明寺名物の桜餅を売る茶店がある他は、昼間とて人通りもない淋しい道である。
その門前道沿いにひっそりと佇むのは、見た眼は料理茶屋風だが、実は男女が逢瀬を交わす場所、出合茶屋であった。流石に由緒ある寺院の真ん前にあるわけではなく、門前道といっても、少し歩いた先に軒を連ねて似たような店が何軒か建っているといった案配だ。