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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~
第12章 山茶花~さざんか~ 其の弐
 見た眼は料理茶屋風ではあるが、この界隈には確かにそのような場所特有の淫猥な雰囲気が漂っていた。
 そんな類の店の一つ〝むらさき亭〟。その二階の一室で、千汐は二階の窓を細く開け、外を眺めていた。
 冬に降る雪は桜の花びらにも似ている。
 千汐は、和泉橋のたもとに咲く桜を眺めるのが大好きだった。春、枝垂れ桜は満開となり、薄紅色の花をたわわにつけ、重たげに垂れた枝先は水面に向かってしなだれる。
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