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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~
第12章 山茶花~さざんか~ 其の弐
 千汐はもまた花になる。男の腕の中で花ひらき、男によって幾度も花びらを散らされた。
 何度も烈しく求め合った後、男は初めて自らの素姓を明かした。
 鳴戸屋曽太郞。男の名を聞いた時、千汐は驚愕した。その身なりや物腰から、いずれ名のある大店の若旦那であることは察せられたものの、鳴戸屋といえば、江戸でもかなり名の通った海産物問屋だ。男―曽太郞は、鳴戸屋のただ一人の跡取りであるという。
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