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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~
第12章 山茶花~さざんか~ 其の弐
 いや、もしかしたら、怖かったのかもしれない。出逢った瞬間から、男のきれいな瞳を見たそのときから、この男に惚れてしまったから、男の名を知り、自分の名前を男に教えてしまえば、二度と後戻りできなくなりそうで。
 この想いを忘れられなくなりそうで。
「千汐」
 短く応えると、曽太郞が破顔した。
「良い名だな」
「千羽鶴の千に、汐って書くの」
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