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第12章 山茶花～さざんか～　其の弐

　千汐だとて、その程度のことはちゃんとわきまえていた。だから、曽太郞の心を疑うことはなくても、自分が曽太郞と所帯を持つことなんて叶うはずがないと端から諦めていた。
「お前の名は？」
　改めて問われ、千汐は淡く微笑む。
　そういえば、自分はまだ、曽太郞に名前すら告げてはいなかった。最初は、ゆきずりで一夜を共にするだけの男に名など告げる必要はないと、次第に男に強く惹かれてゆく中に、名前を告げなかったことなど忘れてしまっていた。