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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~
第12章 山茶花~さざんか~ 其の弐
「家の前には猫の額ほどの庭があるんだけど、どこまでが庭で、どこからが浜辺が判らないんだって、おとっつぁんは笑ってたわ。浜辺には白い浜木綿が群れ咲いていて、それは綺麗だよって、話してくれたの」
八つで村を出てからというもの、父はふた親の死にすら帰ることはなく、葬儀に顔を出すために二度、慌ただしく帰っただけであった。父が十六の歳に母親の後を追うように父親も亡くなり、それ以降、故郷の地を踏むことはなかった。