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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~
第12章 山茶花~さざんか~ 其の弐
 その日からというもの、千汐は〝きっと、また、来る〟そう言った男の言葉一つを宝物のように後生大切に胸に抱えて過ごした。
 が、心に曽太郞という男を棲まわせている以上、夜鷹として客を受け容れることに次第に抵抗を憶え始めてしまったのである。
 それでも、生きてゆくためには稼がねばならない。
 千汐は厭な客でも歯を食いしばって耐え、今まで以上に懸命に生きようとした。
 すべては、あの男(ひと)に逢うために。
 自分にひたすら言い聞かせた。
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