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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~
第13章 山茶花~さざんか~ 其の参
曽太郞は夜具の上にゆっくりと身を起こす。季節外れの風鈴がチリリンと物哀しい音を立てる。
ふいに身の傍を駆け抜けた夕刻の風は、既に夏のものではなく、秋の気配を含んでいた。
迫りくる黄昏刻が開け放した障子越しに、すべてのものを橙色に染めている。畳に渦を描く夕陽の色を眼を細めて眺めながら、曽太郞は全身に力を込める。右脚を動かそうと試みるが、哀しいことに、右の脚はまるで木偶になったように少しも動かない。