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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~
第13章 山茶花~さざんか~ 其の参
千汐もおつなも、そういった後ろ向きというか、自己憐憫に浸って満足するような女ではない。むしろ、二人共に勝ち気で、前向きで、いかにも江戸前らしいさばさばとした気性であった。そんなところが意外にウマが合ったのだともいえよう。
「いつも済まないねえ」
千汐が床の上に身を起こそうとすると、おつなが手のひらを振った。
「ああ、じっとしてな。見舞いに来て、病人を疲れさせちまったんじゃア、元も子もないからさ」