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こころから
第3章 久美子1
不倫願望がないと言えば嘘になる。
熱望しているわけでは決してない。
なければないでも全然構わない。
でも、それでも、もしいいひとがいれば、と時々考えてしまう。
テーブルで頬杖をついて、
せっかくの料理が冷めていくのをぼんやりと眺める。
照り焼きチキンと、ほうれん草と卵の炒めもの。
冷蔵庫にはプチトマトとレタスのサラダが入っている。
炊きたてのご飯にわかめと豆腐のシンプルなお味噌汁。
今食べたらすごくおいしいはず。
せっかく、帰ってきてから急いでつくったのに。
遅くなるなら、もっと早く連絡してくればいいのに。
夫に不満はない。
優しいし、誠実だし、頼りがいもある。
私も外に働きに出ているので迷惑を掛けたこともあるけど、
一度も文句を言われたことはない。
私の両親のことも、真剣に考えてくれている。