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こころから
第28章 直人14
ぼくが言うと、久美子さんはぼくの腕からするりと逃げた。

「またセックスしたくなったの?」

「はい、したいです」

 久美子さんが上目遣いで、
何か言おうとしてやめたのがわかった。
返答を間違えたのは明らかだが、
どう間違えたのかわからなかった。

「いいわ、じゃあ夜にね」

 引き止める暇なく、久美子さんはぼくとフローラルの香りを置き去りに、
さっと資料室から出て行ってしまった。
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