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こころから
第51章 久美子25
 ガソリン?
よくわからなかったけど、
声を掛けてきた男のひとは相当焦っているようで、
すごい力で私を引っぱった。
少し後ろに下がってやっと、
目の前の銀色はトラックのコンテナだとわかった。

 まったく状況が飲み込めず、
足にも腰にも力が入らず、
私は座り込んでいる。
いつの間にかさっきの男のひとはいなくなっていて、
代わりに美香と同じくらいの年齢の女の子に体をさすられていた。
そしてようやく私は、自分ががたがた震えていることに気がついた。
近くで言い争いしてる声。
早く救急車呼んでやれよ。もうとっくに呼んでるよ俺に突っかかるなよおっさん。
別のところからは哀れみを含んだ話し声。
かわいそうもう助からないわね。そうねまだ若い子なのに。
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