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こころから
第52章 久美子26
現実感がない。
夢見てるんだって思いたいのに、
手のひらのひりひりがそれを許してくれない。
手のひらと、膝にも包帯が巻かれていて、
でも怪我らしい怪我はそれだけで、
それなのにすぐ隣にいた直人くんは……
警察の事情聴取で、私はまったくの役立たずだった。
何を聞かれても、何も答えられない。
だってほんとうに何もわからなかったのだ。
自分の名前すら、なかなか出てこなかった。
居眠り運転だったそうだ。
トラックがブレーキを踏む気配もなく歩道に突っ込んでいって、
運悪く路地から出てきた男女がそこにいて、
男が気づいて女を突き飛ばして、
男はそのまま……