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こころから
第53章 久美子27
離婚は、私のほうから切り出した。
お通夜で泣き崩れて、泣き叫んで取り乱して、
私は救急車に乗せられて運び出された。
そのまま入院して、退院の日に、迎えにきた夫に伝えた。
夫は返事をせずに私の荷物を片手で持ち、
もう片方の手で私を引っぱって車に乗せた。
入院の間中、直人くんのことばかり考えた。
私のお腹の中に帰ってきてくれることを心の底から願ったけど、
そんな奇跡は起こらなかった。
せめて直人くんとの最後の関わりである手のひらの傷。
ずっと治ってほしくなかったので、瘡蓋を引っ掻いてめくっていたら、
若い看護師さんに見つかって、看護師長さんに報告されて、
そんなに怒ることある? ってくらい怒られた。
あのひとのせいで、傷は跡も残らずきれいさっぱりと治ってしまった。