この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
こころから
第7章 久美子3
最近はもうめっきり運動しなくなった。
たまに気が向いたときに、一駅分を歩くくらい。
五つ年上の夫が四十歳を越えたあたりから、
ゴルフには行くのに登山を億劫がるようになった。
かと言って、じゃあ私ひとりで行ってくる、
と言うと、夫はいい顔をしなかった。
それで結局、私も登山をしなくなってしまった。
エレベーターは途中のフロアで停止したまま、なかなか降りてこない。
昔なら、もどかしくなって階段を駆け上がってるな、と思いながら、
今の私は、エレベーターが降りてくるまでは、
一歩もここを動くつもりはない。
しょうがないのよ、
下半身に負荷がかかるとおしっこ漏れちゃうんだもの、
なんて自嘲めいた言い訳をする。
坂井くんなら階段駆け上がるのなんて余裕だろうな。
一段飛ばしでも大丈夫なんだろうな。
気づけばそんなことを考えていて、
何でどこから坂井くんが出てきたのよ、と腹が立った。
若さを羨むなんてしたくない。
五十三年生きてきたから、
私は五十三歳なのだ。
たまに気が向いたときに、一駅分を歩くくらい。
五つ年上の夫が四十歳を越えたあたりから、
ゴルフには行くのに登山を億劫がるようになった。
かと言って、じゃあ私ひとりで行ってくる、
と言うと、夫はいい顔をしなかった。
それで結局、私も登山をしなくなってしまった。
エレベーターは途中のフロアで停止したまま、なかなか降りてこない。
昔なら、もどかしくなって階段を駆け上がってるな、と思いながら、
今の私は、エレベーターが降りてくるまでは、
一歩もここを動くつもりはない。
しょうがないのよ、
下半身に負荷がかかるとおしっこ漏れちゃうんだもの、
なんて自嘲めいた言い訳をする。
坂井くんなら階段駆け上がるのなんて余裕だろうな。
一段飛ばしでも大丈夫なんだろうな。
気づけばそんなことを考えていて、
何でどこから坂井くんが出てきたのよ、と腹が立った。
若さを羨むなんてしたくない。
五十三年生きてきたから、
私は五十三歳なのだ。