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あの海の果てまでも
第4章 新月の恋人たち 〜新たなる運命の扉〜
…長い長い航海を終えたような気持ちで、朱浩藍はゆっくりと瞬きをした。
辺りは薄暗く、陽はすっかり落ちていた。
英国の秋の夕暮れは、あっという間だ。
部屋に、静かなすすり泣きの声が響く。
…誰が泣いているのか…。
…目の前に座る美しい日本の青年が浩藍を見つめながら、涙を流していた。
浩藍は思わず微笑み返す。
「なぜ貴方が泣かれるのですか?」
「…だって…朱さんが…あまりに…。
…あまりに…」
かわいそうという言葉を使わない青年…暁に、優しさと繊細さを感じる。
「…そう。
その時は、兄と一緒に死んでしまいたいと思っていました」
…けれど、今は…
浩藍は眼差しを静かにマントルピースの上に置かれた写真立てに移す。
…まるで未開の地へ赴く冒険家のようにテンガロンハットを被り、サファリスーツを身に付け陽気に笑うアルフレッドに肩を抱かれるのはハイスクールの制服を身に纏い、はにかむように微笑む浩藍の写真だ…。
ハイスクールの卒業記念に写真家を呼んで撮ったものだ。
暁も浩藍の視線の先の写真を見つめる。
「…この方が…」
浩藍は微笑みながら頷く。
「…アルフレッド・ジュード・ロレンス。
ここのオーナーであり、私に新しい人生の扉を開けてくれたひとです」
浩藍は自分に語りかけるようにそっと告げた。
「…私は、あの時死ななくて良かった。
生きていて良かったと思っております」
辺りは薄暗く、陽はすっかり落ちていた。
英国の秋の夕暮れは、あっという間だ。
部屋に、静かなすすり泣きの声が響く。
…誰が泣いているのか…。
…目の前に座る美しい日本の青年が浩藍を見つめながら、涙を流していた。
浩藍は思わず微笑み返す。
「なぜ貴方が泣かれるのですか?」
「…だって…朱さんが…あまりに…。
…あまりに…」
かわいそうという言葉を使わない青年…暁に、優しさと繊細さを感じる。
「…そう。
その時は、兄と一緒に死んでしまいたいと思っていました」
…けれど、今は…
浩藍は眼差しを静かにマントルピースの上に置かれた写真立てに移す。
…まるで未開の地へ赴く冒険家のようにテンガロンハットを被り、サファリスーツを身に付け陽気に笑うアルフレッドに肩を抱かれるのはハイスクールの制服を身に纏い、はにかむように微笑む浩藍の写真だ…。
ハイスクールの卒業記念に写真家を呼んで撮ったものだ。
暁も浩藍の視線の先の写真を見つめる。
「…この方が…」
浩藍は微笑みながら頷く。
「…アルフレッド・ジュード・ロレンス。
ここのオーナーであり、私に新しい人生の扉を開けてくれたひとです」
浩藍は自分に語りかけるようにそっと告げた。
「…私は、あの時死ななくて良かった。
生きていて良かったと思っております」