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あの海の果てまでも
第4章 新月の恋人たち 〜新たなる運命の扉〜
「え⁈ぼ、僕ですか?」
ロンが口笛を吹いた。
「そりゃあいい」
「暁さん、貴方東京でカフェを経営していたとおっしゃいましたね。
お店を経営されていたのなら、この仕事を安心して任せられます」
「で、でも!僕は中国茶の知識はありませんし…」
「大丈夫です。
私が教えます。
…それに貴方は美術品の知識は豊富ですよね?
この店の美術品をよく熟知されていました。
審美眼は確かかと…」
「それは…屋敷に飾ってあったのを見て育ったくらいで…」
「眼が肥えていらっしゃるのは最初から分かっていました。
…それに…貴方はあの縣男爵家の御子息でいらっしゃいますね?」
朱の言葉に、暁は眼を見張る。
「どうしてそれを?」
「…縣という珍しい名字はそうそうあるものではありません。
私のお茶の教室には日本人の領事館の奥様や日本軍の高級将校の奥様、民間企業の駐在員の奥様がいらっしゃいます。
中にはゴシップ好きな有閑マダムがおられるのですよ。
…尤も、私はゴシップには興味はありませんし、貴方が駆け落ちのようにこの英国に逃げて来られたのだとしても、なんとも思いません。
私も同じようなことをしようとしていたのですから…」
しみじみとした哀惜の眼差しが暁を見つめる。
「…朱さん…」
思わず言葉を詰まらせる暁に、朱は打って変わって朗らかな笑顔で暁の手を握りしめた。
「ぜひ、私の店で働いてください。
…袖擦り合うも他生の縁…と申しますよね」
…日本育ちの朱は、諺にも強かったのだ。
ロンが口笛を吹いた。
「そりゃあいい」
「暁さん、貴方東京でカフェを経営していたとおっしゃいましたね。
お店を経営されていたのなら、この仕事を安心して任せられます」
「で、でも!僕は中国茶の知識はありませんし…」
「大丈夫です。
私が教えます。
…それに貴方は美術品の知識は豊富ですよね?
この店の美術品をよく熟知されていました。
審美眼は確かかと…」
「それは…屋敷に飾ってあったのを見て育ったくらいで…」
「眼が肥えていらっしゃるのは最初から分かっていました。
…それに…貴方はあの縣男爵家の御子息でいらっしゃいますね?」
朱の言葉に、暁は眼を見張る。
「どうしてそれを?」
「…縣という珍しい名字はそうそうあるものではありません。
私のお茶の教室には日本人の領事館の奥様や日本軍の高級将校の奥様、民間企業の駐在員の奥様がいらっしゃいます。
中にはゴシップ好きな有閑マダムがおられるのですよ。
…尤も、私はゴシップには興味はありませんし、貴方が駆け落ちのようにこの英国に逃げて来られたのだとしても、なんとも思いません。
私も同じようなことをしようとしていたのですから…」
しみじみとした哀惜の眼差しが暁を見つめる。
「…朱さん…」
思わず言葉を詰まらせる暁に、朱は打って変わって朗らかな笑顔で暁の手を握りしめた。
「ぜひ、私の店で働いてください。
…袖擦り合うも他生の縁…と申しますよね」
…日本育ちの朱は、諺にも強かったのだ。