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第1章 Ｓさん

始めは ついばむようなキス。

それから わたしの唇を優しく割り
Ｓさんの 温かく柔らかい舌が入ってくる。

久しぶりに味わう その感覚に
くらくらと目眩をおこしたような錯覚に陥った。


そして、わたしの口内を
探るように Ｓさんの舌が動き出す。

今まで こういうキスが
気持ちいいと思ったことは
ほとんどなかった。
興奮を高めていくための
準備のようなものだと思っていた。

でもＳさんのキスは違った。
ゆっくり頭を撫でるような
そっと指を絡めていくような
そんな優しいキスだった。