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夜来香 ~若叔母と甥の危険な関係~
第13章 登校日
「あっついな…夏休みに全員登校させてホームルームと全体清掃って…生徒を労働力としか考えてないだろ…」

そのホームルームが終わった途端に飯田健人が僕の席の前に座って愚痴を吐いた。

「まぁ、そう愚痴るなよ…こんな広い学校全部業者に掃除なんかさせたら親がお金を出さなきゃいけなくなるんだから…」

「なんだよ…陽翔…なんか悟ったようなこと言って…」

陽翔は明らかに夏休み前と雰囲気が変わっていた。
これはなんかあったとアンテナが働く。

「愚痴ったところでどうにもならないって言ってるだけだろ…まぁ、裏庭は日陰になってるからグランドよりはましで良かったじゃないか…さ、諦めて行こうぜ…」

健人は聞き分けのいい陽翔の言葉に諦めたように頷いて校舎裏の庭に向かった。

日陰とはいえ夏真っ盛りの外清掃は厳しかった。
陽翔と健人は首にタオルを巻き、スポーツドリンクを飲みながら草抜きをしていた。

「なぁ、なんかあったんだろ?…それも良いことが…教えろよ…」

健人はニヤニヤとしながら額に汗を浮かべて陽翔に話しかける。

「…べ、別に何もないよ…」

明らかに動揺していた。
これが只の童貞卒業なら自慢気に僕から話をしていただろう。
だが、相手は叔母なのだ。
嬉々として話せることではないことぐらい解っていた。

「嘘つけ…どうせカテキョのことなんだろ…」

「な、なんでっ…別に結衣さんとは…なんにも…」

【ほんとに解りやすいな…】

「童貞でも捨てさせてもらったか?…」

健人の言葉はあまりにも的を得すぎていた。
言葉に詰まり、耳が真っ赤になってしまう。

「おいおいマジかよ…カテキョっておばさんの妹なんだろ…親戚だよな…」

【へぇ…まぁそのうちとは思っていたけど案外早かったなぁ…】

「別に健人には関係ないだろ…俺は本気なんだよ…」

【しまった…これじゃ認めたようなもんじゃないか…】

「本気って相手何歳だよ…」

僕は健人に乗せられたのかムキになってしまった。
しゃがみこんで向き合うように草を抜きながら喋っていたのに、急に立ち上がって健人を見下ろした。

「歳なんて関係ない…健人でも結衣さんをおばさん扱いするのは許せないからな…」

健人は大きな声を出した陽翔を呆気に取られたように見上げて、苦笑した。

「なにムキになってんだ…一般論だよ…別にいいんじゃないの…」
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