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それぞれの後編
第10章 サディスティック・マリッジ〜第五章・秋〜【前進するために…】
一年経っても鮮明に思い出す。

気まずくて、愛里咲は俯いた。


「……彼、雰囲気が変わったね」

不意に、里中が口を開いた。

「え? 琉ちゃんですか?」

愛里咲の言葉に、里中が頷く。


「なんていうか…柔らかくなった」

(……確かに)

以前に比べて優しさを表に出すようになった琉。愛里咲は心の中で頷く。

「……それに…何か…余裕みたいなのがある。……ちょっと妬ける」


この一年間、取引相手である琉と里中は度々会う事があった。

その度に変わっていく琉に、里中は気付いていた。


「愛里咲…もう一度聞きたい」

里中はしっかりと愛里咲に向き直る。

「俺は…愛里咲が幸せなら身を引く。愛里咲は、彼の隣で幸せになれている? 愛してもらえている?」

「……!……」

一年前、愛里咲がそうありたいと願った言葉だ。
今なら、ハッキリ言える。


「……はいっ、私、今とても幸せです」

迷いなくそう言い切った愛里咲を、里中は満足げに見つめた。


「…良かった…それを聞いて安心した。これで…俺も前に進める……」


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