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全部、夏のせい
第20章 エピローグ
「夏のせいかと思ったの」

レオンと過ごす何度目かの夏の夜、
レオンの腕の中で呟く。

小さいアラムも自分の部屋で眠るようになって、
余程の時でないと私達のベッドに潜り込むこともなくなっていた。



「えっ?」


「暑さに翻弄されて、
蜃気楼みたいに…。
一目惚れとかも、幻かと思ってたの」と言うと、

「確かに写真の中のマーサは、
夏の妖精みたいに儚かったな。
トウキョウで会ったマーサは、
夢かと思ったよ。
だから、確かめたくて、
夢じゃないって思いたくて、
なんか、強引に抱いてしまったけど、
それ、夏のせいだなんて思わないよ?
秋に出会ったとしても、
冬の雪の中で会ったとしても、
絶対にマーサを抱き締めて、
自分のものにしたいと思ったに違いないから」


「そうなの?」


「うん。
夏のせいなんかじゃないよ?」



レオンはそう呟きながら、
長い睫毛を震わせるように瞳を閉じてそのまま眠りについてしまった。


そう?
そうだったのかしら?


アラムの時も、レオンも、
全部、夏のせい。

そんな気がするけど、
それも良かったのかもしれないと心から思っていた。


そうでなかったら、
一目惚れから始まる恋なんて、
きっと無かったに決まってるもの。


全部、夏のせい。



それで良かった。



心からそう思いながら、
レオンの頬にキスをして、目を閉じた。


一眠りして煌めく夏の朝の光に包まれたら、
何度も何度もキスを交わして愛し合って、
また、新しい夏の日を迎えて過ごそう。







(完)
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