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体育倉庫の狂宴~堕落する英語教師~
第1章 1
でもだからと言って――重力に引っ張られるように――堕落していく自分を、このまま許しておくつもりもなかった。

(しっかりしなきゃ、ダメよ……)

水溜りに映る自分の顔を見つめて、涼子は自分を奮い立たせる。

(私は教師なんだから……しっかりしなきゃ、ダメ……)

教師としての”誇り”を取り戻す決意を固め、それから立ち上がった涼子は、体育倉庫に向けて、また歩き始めた。

               ☆☆☆☆☆

実を言えば、涼子はそれほど強く望んで、教師という職業に就いた訳ではない。

大学に通っていた頃は、将来“出来れば”就ければいいと思っていた職業の、そのいくつかあった選択肢のうちのひとつ、その程度に過ぎなかった。

でも、今は違う。

この四年間を通して涼子は、生徒たちの長い人生において、極めて貴重な時代である“青春”を、一緒に過ごすことが出来るこの職業に、遣り甲斐と誇りを見出していた。

この先も、教師としての”誇り”を、持ち続けていたい――涼子はそう、強く願っている。

               ☆☆☆☆☆

しかしながら――年老いた馬にどれだけ強く鞭を打っても、駿足は望めないように――すでに教師としての自信を失いつつある涼子に、その誇りを取り戻すべく強い決意など、望むべくもなかったのかも知れない。

体育倉庫の前に辿り着いた時、涼子はその引き戸を開けるよりも前に――つい先ほど新たにした筈の固い決意は、脆くも崩れ去った。
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