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宝探し…
第1章 宝探し…
午前10時…
それは、夫と娘を会社と幼稚園に送り出し、洗濯物を干し、掃除機を掛け終えてホッと一息入れようと、朝食時に煎れた残りのコーヒーをリビングのソファーに座って飲む…
ある意味、人妻の一日の最初の至福の時間といえる。
「ふうぅ…」
『今日は一日中お天気が良く、最高のお洗濯日和になるでしょう…』
と、朝のテレビのお天気お姉さんがにこやかに言っていた。
どうしようか、お布団も干そうか?…
私は迷う。
そう逡巡しながら、無意識にスマホを手に取り、ロックを解除する。
うん、そうだ、これ次第にしようかな…
これ次第…
それは私のもう一つの午前中のルーティンである『出会いサイト』だ。
(35歳、都内在住の専業主婦です。
これから逢える方いませんか?
160-84-58-86割り切り希望♡)
そう書き込みをする。
ブッ、ブッ、ブッ、ブッ…
すると、3分と経たずに次から次へとメールが着信してくる。
(こちら40歳都内営業マンです。
込み3でどうですか?)
(22歳大学生です…)
(33歳夜勤明けでムラムラしてます)
等々の返信メールが矢継ぎ早に着信してきた。
そう、出会いサイトは女性の書き込みならば一瞬の内に、山の様に返信がくるのだ。
そしてそれはある意味宝探しの山ともいえる。
なぜなら、その数多のメールの山の中から、これは、というメールを探し、その相手と出会うのだから…
わたしはそんな宝の山から、当たりを探す…
だが、なかなか当たりは少ない…
そしてヘタすれば、宝くじよりタチが悪い…
ましてや宝くじは10枚買えば必ず1枚分の金額は当たるのだが…
しかし、このお宝の山からはそれは無い…
いや、どちらかといえば、ほぼリスクばかりといえる…かもしれない。
それも危険なリスク…
でも、この朝の、息抜きの一時…
なぜか、この宝探しが止められないのである。
そうしている間にも…
ブッ、ブッ、ブッ、ブッ……
と、休む間もなく返信メールが届く。
うーん…
どれにしようか…
宝探しが止められない…
それは、まるで海賊の冒険の旅…
そう…
『わたしは…海賊王になりたい…』