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クピードー(Cupido)
第1章 クピードー(Cupido)

紀元前10世紀…
オリンポスの山に神々が住んでいた頃…
「あぁ、この世には神はやっぱりいないのか…」
と、絶望の喘ぎを漏らしている少年がいた。
そしてその少年は奴隷であった…
「あんなに毎日、毎晩、神様にお祈りを捧げてきたのに…」
その奴隷の少年は、雇い主の理不尽な毎日の過酷な仕事にとうとう体力も気力も失われ、そして…
幼い命の火も消えようとしていたのだ。
「ああ、生きていても地獄だったが…
まだ、死にたくない…
女も知らずに…
死に……た…く…な…ぃ………」
間もなく少年の短い命の火が消える…
『おーい、クピードー、おい、いないのか?』
ゼウスが呼んでいる。
『は、はい、何でございますか、ゼウス様…』
『ほら、あの少年は、お前の担当じゃなかったのか?』
と、ゼウスが、空の上から、間もなく命の火が消えかかっている少年を指指した。
『あっ、そ、そうです、いけね…
つい、違う仕事をしていたもので…』
と、クピードーは慌てて言い訳をする。
『ほら、間もなく死んでしまうぞ…
それに神様はいないのかって絶望して嘆いていたぞ…
どうするクピードーよ…』
と、ゼウスが意地悪気な顔をしてクピードーを見つめる。
『ああ、しかし、もう間に合わない…』
そう、いかに神様の一人であるクピードーでも、もう少年の命を救うのには遅かったのだ。
「く…お、女も…知ら…ずに…死ぬ…な…ん…て…」
しかし、クピードーには少年の最後の言葉が聞こえたのである。
『よし…特別だ…』
そしてクピードーは【恋の矢】といわれるクピドの矢を少年に向けて放った。
「あ…ぁ…死に…た…く…………」
そして少年の最後の意識に告げていく…
『少年よ…
今から3000年の時を超え、復活の命と、愛を与える…』
「ぁ…ぁ…ぁ………………」
少年は亡くなった…

