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  バガテル第25番イ短調  (エリーゼのために)
第1章 エリーゼのために…
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 二人の愛情と友情は更に高まり、昂ぶり、親近感を通り越したまるで兄弟、いや、姉妹の如くの一体感が生まれたんだ。

 もう、二人の間の関係は…

 揺るがない筈だったのだが…


 それは…
 二十日間の軽井沢の別荘から帰ってきたお盆前の頃であった。

「葵さん、実はお盆に父親の田舎に一緒に帰省しなくちゃならなくて…」

 そう、僕の父親方のおじいちゃんの三回忌の法要があって父親の実家である静岡県に両親と一緒に三泊四日で帰省しなくちゃいけないのだ…

「あら、そうなんだぁ…
 じゃぁ四日間くらい会えなくなっちゃうのね?」

「あ、は、はい、そうなります…」

「あぁ、それは寂しいわぁ」
 と、葵さんはそう呟いてくれる。

「僕もです…」

「駿とそんなに離れるなんて、仲良しになってからは初めてね」

「は、はい、そうですね」

 そうなんだ…
 葵さんとこうして愛し合う関係になって以来、三日間以上会わない日は無かったんだ。

「えぇ、ヤダわぁ、寂しくなっちゃうわぁ…」

「そんな、帰ってきたら直ぐに来ますからぁ」

「うん、絶対だからね」

「は、はい」

 そう僕と葵さんの二人は、軽井沢の別荘で二十日間、朝から晩までずうっと一緒にいても…
 飽きなかったし、喧嘩もしなかったし、苛つ事なんかもしなかったんだ。

 いや、そんな不惑は全くあり得なかったんだ…

 だから、寂しい…
 それは本当に、ホントの本音であった。

「だけど…そんな事情だもんね、仕方ないわ」




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