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  バガテル第25番イ短調  (エリーゼのために)
第1章 エリーゼのために…
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 僕は三泊四日でお盆の法事の為に父親の静岡県の実家に出掛けた…

 そして…

 この葵さんに逢えないこの空白の三日間に、いや、三泊四日のこの時間に…

 葵さんの身に、僕の知り得ないナニかが有った…
 いや、起きたみたいなんだ。

 それは…

 まずは父親の実家に到着した時に…

『今、到着しました』
 と、LINEをすると…

『お疲れ様、疲れたかな?』
 と、五分もせずに返事が来て、そこから夕方に掛けて何通か、いや何通もLINEを交わした。

 そして…

『久しぶりに親戚の面々の顔を見ました』
 と、夜の9時過ぎにLINEをすると…
 返事はなかったが『既読』にはなった。

 だけど、その時の僕は移動の疲れもあったし、久しぶりのイトコ達や、叔父、叔母達との再会の気疲れもあり、返事が来ない事は気にならなかったし、既読が付いたから…
 早々に寝落ちしてしまったのである。

 それに次の日は朝からお墓参りをし…
 
 親戚一同が会して法事の法要をし…

 色々と移動や、気遣い、そして久しぶりの親戚、イトコ達との関わりに忙しく、葵さんにLINEをする暇も無く…

 ましてや、ずうっと男の子として、振る舞い…

 そう、あの頃は、女の子になっているのが自然であって…

 男の子でいるという事は、演技、振る舞いをしなくてはならないという違和感が常に付きまとい…

 本当に気遣いと気疲れをしてしまっていたんだ。

 だから、葵さんの事等、考え、想い、思い浮かべる余裕が無かった…

 そして葵さんを思い浮かべたのは…

 その日の夜…

 夕食を済ませ、お風呂を上がった夜10時近くだったんだ。

 あ、ヤバ、連絡できなかった…

 そう思い、急ぎLINEをする。

『今日は、朝から大変でしたよ』

 しかし返事は来ず…

 いや、既読さえ付かなかったのだが…

 疲れ切っていたから、あっという間に寝落ちしてしまった。

 次の朝…

 僕は朝から、親戚、イトコ達と近くの観光スポットに出掛ける為に、時間的な余裕が無く…
 いや、バタバタと忙しくて、やはりスマホを、LINEを気にする暇も無くて…
 スマホをチェックしたのがお昼時であったのだ。

 だが…

「あれ?」
 返事どころか既読も付いてはいなかった。

 その時の僕はそれに対してそれ程気にならず…



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