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  バガテル第25番イ短調  (エリーゼのために)
第1章 エリーゼのために…
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「キスしよ………」

 舞香ちゃんは震える声で、そう囁いてきた…

「え…あぁ、う、うん…」

 そして彼女は目を閉じて、僕に正対する。

 あ…

 もちろん、葵さんと関係をすることになったこの約10ヶ月間…

 僕は、ううん僕と葵さんは数え切れない程にキスをしてきた…

 いや、もはや葵さんとのキスは日常的な、特別感が無くなるくらいにお互いに求めあってきた… 

 そして葵さんの指導の元、もっと感じるように…

 もっと上手にと教わり、上達したと思えるのだが…

「…………」
 舞香ちゃんは目を閉じて、僕にキスを求めてきていた。

「ま、舞香ちゃん…」

 僕はゆっくりと彼女の肩に触れていく…

「…………」

 あっ…

 舞香ちゃんは…

 小さく震えていた…

「あ……」

 そうだ、そうだよ…

 舞香ちゃんには初めてのキスに違いない、いや、初めてのキスなんだ…

 そして僕は…

 僕も…

 初めてのキスのフリをしなくては…

「舞香…ちゃん…」

 僕はゆっくりと彼女の肩を引き寄せ…

 唇を寄せていく…

「ぁ………」
 唇が触れた瞬間…
 舞香ちゃんは小さく、ビクっと震えた。

 そして久しぶりのキスに…

 思い返せば最後の葵さんとのキスは、約二週間前のあの父親の実家に法事で行く前夜の別れ際にしたキスが最後である…

 そして、今…

 久しぶりのキスに…

 思いもよらぬ展開のこの舞香ちゃんとのキスに…

 僕の心も震えてきていたんだ…

 そして…

 つい…

 無意識に…

 唇を吸い…

 舌先を伸ばし…

 唇を開かせ…

 ギュッと抱き締め…

「………ん…ん…」

 舞香ちゃんのカラダの力が抜けていく…

 




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