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担当とハプバーで
第7章 皮肉のパーティ
鳥の声が遠くでかすかに聞こえる午前六時すぎ。
マンションのエレベーターを降りて、鍵を取り出す。
祥里が寝ていることを祈りながら、極力音が出ないように挿しこみ、ガチャリを回した。
ドアノブを引いて、ガタンっと音が響く。
「え……二重ロック」
ドアチェーンよりも強力なロックが行く手を阻む。
隙間から覗くと、玄関に座っていた影が起き上がった。
大人しくノブから手を離して、鍵を抜き取る。
一度閉まった扉越しに解除する音がして、それから静かに大きく開かれた。
「……おかえり、凛音」
「ただいま……」
リビングに踏み入れるまで、祥里は無言だった。
オーバーサイズのTシャツとステテコの後ろ姿は、寝不足を訴えるように不機嫌な空気を放っている。
定まらない視点を落ち着かせようと、バレないように深く息を吐いて吸う。
祥里は椅子を引き出してから、力なく座ると、目を擦り欠伸をしてから、こちらを見据えた。
「朝帰りってどういうこと?」
聞くまでもなく怒りに満ちた声。
自分はこの一年に何回もあったくせに。
それでも目が覚めた時から、ずっと聞かれると思っていた質問に、脳内で練習した言葉で返す。
「あ、昨日連絡したと思うけど、友達がヤバめな相談したいって言われてさ、その子の家に行って、話し込んじゃって、泊まることにしたんだよね」
嘘というのは、吐き慣れていない口に合わない。
声が震えてしまって、動揺が増す。
祥里はテーブルの上で拳を合わせている。
親指を擦り合わせるように。
「その連絡も昨日十一時に送ってきたよね。ありえんくない? 仕事終わってその子と合流したとしても、八時までには俺に連絡できただろ」
「あ、うん……ごめん。十時くらいには帰れると思って」
立っているままなのも不自然だけど、祥里の視線が椅子に座ることを許さない。
カバンを両手で握り、リビングの中央で立ち尽くす。
「携帯、出して」
祥里が手を開いて差し出す。
「えっ」
「え、じゃねえよ。アプリ確認すんの。そのお友達とのメッセージとか電話履歴があんだろ」
まさかそこまで踏み入れてくると思わなかった。
「や、やだよ。そんな調べられるのなんか」
「は? 朝帰りしてやましいことねえなら、見せろよ」
「祥里だって見せてきたことないじゃん!」
逆ギレだって自覚しつつ、声を荒げた。