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担当とハプバーで
第7章 皮肉のパーティ

「お前さ、なんで今俺の話に切り替わると思ってんの」
「自分は何回朝帰りしたか覚えてる? 私が友達と泊まってきたら、ここまで責められないといけないわけ?」
 ああ、声が震えてる。
 でも感情は本物。
 責任転嫁だってわかってるけど、そもそもハプニングバーに行ったのだって、祥里が原因だ。
 夜の関係もほぼなくなって、誘っても虚しくなるだけ。
 仕事って言ってもどこまで本当かわからない。
「私だって、何度も怒鳴りたかったよ。鍵だって閉めて寝たかったよ。なに、あの締め出し。玄関で寝てたみたいだけど、私が帰ってきて起きなかったらどうするつもりだったの」
「起きただろ」
 最後の一文だけを返されて、歯を噛み締める。
 テーブルに近づいて、ばん、と両手をついた。
「門限なんて作る必要ある? 祥里は毎日破るのに」
「なあ。今俺の話してねえだろ。早く携帯出せよ」
「……やだ」
 祥里は弾かれたように立ち上がり、逃げる暇もなく私の腕を掴むと、鞄を乱暴に持ち上げた。
 ボタンをこじ開け、中に手を入れてこようとしてくるので、急いで力づくで鞄を引っ張る。
 でも力で勝てっこない。
「やめてっ」
 こうなれば、先に携帯を取り上げないと。
 外ポケットのそれを手の中に収めると、鞄から手を離して廊下の扉に駆け込んだ。
 急いで鍵を閉める。
 流石に逃げ出すとは思ってなかったのか、数秒後に足音がゆっくりと近づいてきた。
 トイレの中で、携帯の画面をつけ、メッセージアプリの中からハヤテの履歴を非表示にする。
 それから有岡も。
「おい、出てこいよ」
 ノックもせず、ただ扉の前で圧の強い声がする。
「……私は、祥里と一緒にいれる自信が無い」
「ああそう。人が毎日どんな思いで仕事してるかも知らねえで。毎週うざい元同僚に引き抜きの相談されて、クソな上司のキャバクラに付き合わされて、お前は夕飯一つも満足に作れずこのザマかよ」
 パキパキと。
 心の破片が崩れてく。
 そんなふうに思ってたんだ。
 家事の一つもしないあんたが。
 私の存在価値を、夕飯の出来一つで判断してたんだ。
「凛音はさ、俺の浮気疑ってるみたいだけど、俺からも言わせてもらうぞ。お前、市川塩浜に友達なんて住んでねえよな」
 時が止まったように静寂が降りてくる。
 腕の血管がピリピリする。
 なん、で。
 なんで知ってるの。
 昨日いた場所。
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