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担当とハプバーで
第7章 皮肉のパーティ
悔しそうな目で地面を睨んでる。
流石に踏み込みすぎか。
手の甲を顎に当てて、黙り込む。
溢れた餌を求めて鳩が寄ってきた。
ジンジャエールしかないよ。
艶めく羽が日光で煌めく。
拍子抜けする鳴き声をあげながら、足元をうろつく。
「とりあえず、聞きたいことは、聞けたから」
精一杯という声で。
「他の人には、言わないでね」
ここで脅したらどうなる。
ちょろさを露呈して。
深いため息を吐いた。
「いいけど。オレ以外の異性には相談しないでほしいね。あともう会わないほうがいいよ、グラサンとは。葉野さん誰が見ても本気で沼ってるし。流石に別れてからにしなよ」
返事がないので、鳩を眺めることにした。
くっくっと首を前後に揺らしながら歩く。
足跡がうっすら砂に残っていく。
「……別れようと思ったんだけどね」
「そこで彼氏にすがりつくのは軽蔑だけど」
「私は、別れたいんだけど」
「彼氏のせいにしない。婚約まで進んでたなら、親同士にも顔合わせて別れの挨拶くらいしたら」
「そう、だよね」
「そこまで不誠実じゃないだろ。もしかして学生みたいにフェードアウトでとか。勝手に同棲解消すればいいと思ってたりする? 三十過ぎてんでしょ」
「ありがと。もう行くね」
耳が痛いか。
立ち上がった背中の弱々しいこと。
「葉野さん」
足を止めて、振り返る。
晴れた青空をバックに日光に照らされて、髪がふわりと揺れる。
あのホストのせいでそんなに綺麗になったのか。
短い期間だったなあ。
ライブじゃキラキラした目をしてたくせに。
まあ、ホストとバンドマン両方相手にできる器用な人じゃないのもわかってる。
ふっと笑ってから、口を開いた。
「オレの連絡先消しといて。巻き添えで恨み買いたくねえし。ライブ来るときは飛び込みでよろしく」
数秒固まってから、カバンから携帯を取り出す。
まさかその場でとは思わなかったけど。
ススっと操作をしてから、ぺこりと頭を下げてビルに向かって歩き出した。
一人残されて、笑いがこみ上げる。
親父の心配なんかしなくてよかった。
あの外見にハマってるなら、多少若作りした親父に引っかかる女じゃないだろ。
赤髪をガシガシと掻く。
こういうのが意外と発破になって、寿退社するのもあり得るだろうなあ。
それはそれで、祝う気持ちは出てきそうだ。