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担当とハプバーで
第8章 最後の約束
片耳のイヤホンを外して、まだシャワーの音が聞こえるか確認してから、もう一度画面に視線を向ける。
ハヤテにカメラが寄って、サングラスの向こうの目がよく見えるようになる。
鋭い眼光がカメラ越しにこちらを見つめる。
「今までのネタは基本マサヤさんとか、タツさんとかのだったんですけど。結構店に来てくれる姫たちからリクエストもらうことがあって。全部に答えるわけにはいかないけど、今回から三回に分けて、ピックアップしたリクエスト企画になります。一回目が俺で、二回目がタツさん、最後がナオキさん企画って感じです」
「めっちゃ真面目にカンペ読んでる」
「うるせえんすけど」
茶化したナオキに得意の低音と真顔で返す。
「あ、姫には許可取ってません。不満があったら今度遊びに来た時に説教してね。特にオレね」
「じゃあ、早速これから一人ずつエピソード話してもらいます。企画は過去の恋愛失敗を聞いてみた、ですけど……まあ俺からか」
頷いた二人に、ハヤテも深く頷いて、ふうっと大きく息を吐いた。
話し始めようと口を開いてから、照れるような笑みが広がって、テーブルのタバコに手を伸ばす。
「間が長いよ」
「いや、一服させて」
それからカットが入って、再度ハヤテが映される。
いつの間にか涙は止まって、新曲を聴くファンのようにハラハラドキドキとした気持ちに包まれていた。
ハヤテの過去の恋愛の話は聞いていない。
今は恋人もセフレもいないと、あれが嘘じゃなければ、相当昔の話が出てくるんだろうか。
長い指を組んで、決心したようにカメラに顔を向ける。
「俺結構学生時代付き合った彼女が重くて、受け止めきれなくて。だから支える自信もなくて、成人してからは特定の一人って決めたことはなかったんすけど。このチャンネル始めてから、自分よりも自分のことを知っている人がいるのを知って、すげえ大切にしなきゃって思ったんですよ」
「配信者の鑑じゃあん」
タツの相槌が鼓膜にとどまることなく流れてく。
ただ、ハヤテの言葉の渦だけに全神経が浸ってる。
ー凛音は本当に全部見てきてくれてるだろ。俺より俺の言ったことよく覚えてるー
「そういう人と話す時ってなんのストレスもなくて、すげえ幸せ感じてたんです」
ーだから、一緒にいて幸せー
「それがその人に伝わってたかはわかんねえけど」
ーこれはリップサービスじゃなくて、本音ー