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担当とハプバーで
第2章 危険な好奇心
ホストは永久指名制だから、ナンバーに入っている彼らと話すことはイベントでもなければないだろう。
不思議な空気のタツが姫には何を喋るのか。
トップのナオキはどんな態度なのか。
初日に案内をしたマサヤは、ナンバーにはいないものの管理者なのか。
わからないことばかり。
まるで読み始めた漫画のように。
次々飛び出す新しい人たちの情報を少しずつ手に入れる。
主人公はもちろんハヤテ。
なんて刺激の強いコンテンツだろう。
画面の向こうのこの人たちに会える場所があるなんて。
なんて恐ろしい底なし沼だろう。
時計の音にハッとして米を研ぎにシンクの前に移動する。
食器棚に立てかけて動画を見ながら食器洗いと炊飯を済ませてしまう。
日々の単純作業なのに動画を見ているだけで浮き足立つ。
寝転んで、ストレッチと筋トレをしながら続きを楽しむ。
決して見ることのできない裏側をカメラは写す。
姫には見せない緩んだ表情。
男子校のようなノリ。
時に叱咤するシーンも。
動画を遡ってなんとなく気づいたけれど、夜明けのジャックのホストは三十人ほどらしい。
それに加えてオーナー、ボーイとなると四十人くらいだろうか。
そうなるとひとクラス分。
トラブルも人間関係の悩みもあるだろう。
だってこんなに密な仕事他にない。
女を口説く姿を共に見せ合い、数字で競り合い、晒し合っているなんて。
想像もつかない。
キャバクラを思い浮かべる。
自分には無理だ。
美を求めて日々精進することも、女同士の妬みや争いに身を投じるのも無理だ。
夜職は大金を生む羨望の的になるけれど、その精神的負担は計り知れない。
ハヤテはどうしてホストになったんだろう。
あの見かけは憧れのホストがいる感じもしない。
我が道を行くようなスタイル。
それとも任侠ものでモデルでもいるんだろうか。
自分をプロデュースする時に、あそこまで突っ切って髪型も服装も決めることができるだろうか。
すごいなあ。
考えれば考えるほど好きになってしまう。
あの余裕な接客の裏にある努力。
身のこなしだって経験の賜物。
だめだ。
今夜の会計安いなって思ってしまう。
安くない。
一ヶ月のランチ代の二倍。
交通費の三倍。
安くないんだ。
米の炊ける匂いに、一時間経ってるのに気づいた。