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担当とハプバーで
第2章 危険な好奇心

 ドライヤーで髪を乾かし、動画サイトを眺める。
 二年前よりさらに前の動画では、ハヤテの髪の色が黒じゃなかった。
 茶髪でピアスもほとんど開いてない。
 目つきは今と変わらないけれど、サングラスもせず初々しい顔立ちにくすぐったい気持ちになる。
 灰色の迷彩シャツに、黒いパンツ。
 もしかして、まだ三年目とかなんだろうか。
 喧嘩ドッキリ動画で、まだナンバー入りしてないナオキとハヤテの喧嘩をマサヤが止める内容。
 喧嘩のきっかけが頼んだのと違うタバコを買ってきたからと言うくだらなさに、最初からグダグダ感がすごい。
「言ったよな、オレは若葉しか吸えないって」
「いや、ナオキさんマルボロ派って聞いてたし」
 さんづけで同僚を呼ぶのが新鮮。
 今では力関係は変わってるんだろうか。
 イライラと首元を掻いているのを見て、まだ刺青が入っていないのに気づく。
 この二年で入れたんだ。
「生意気言ってんなよ。店始まる前に買い直してこいよ」
「……てめえで行けよ」
「お前今なんつった!」
 あまりにできの悪い演技に笑いがこみ上げる。
 全部がカタカナに聞こえてきて、テロップも情けないフォントで笑いを誘う。
 キャッシャー周りの整頓をしていたマサヤが呼ばれて、二人が胸ぐらをつかみ合っているところに現れる。
 身長はハヤテの方が高いので、ナオキが背伸びしているのも空気を震わせている。
「何してんの、二人とも。落ち着いて」
「こいつが悪い」
「いい年こいて若葉しか吸えねえってダサすぎでしょ」
「電子よりはマシだっつの」
「落ち着けって言ってんだろ!」
 あの穏やかな紳士口調のマサヤの怒号に、全員がびっくりして固まる。
 画面越しでも凍った表情に寒気がする。
「ナオキ、お前大事な時期にくだらねえ喧嘩ふっかけてんなよ。ハヤテ、先輩への対応ミスったら終わるぞ」
 数秒で場をまとめた言葉に、三人の力関係が見て取れる。
「すみません。マサヤさん。これドッキリっす」
「知ってる」
「ええ!」
 ニヤリと笑ったマサヤに全員が破顔する。
 ハヤテは安心したように拍手をした。
 他の囃し立てていたメンバーも安堵の息を漏らす。
「企画者、タツでしょ」
「せいかーい」
 のほほんとした声にカメラが向くと、前髪をいじりながら気だるそうにタツが手を振った。
 ああ、面白いな。
 店では見れない姿。
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