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担当とハプバーで
第5章 呼吸もできない沼の底
「あ、当たり前でしょ……」
ここに来るのが慣れているんだったら、きっと夜明けのジャックにだって通い続けたはず。
祥里以外の男性に執着するのが怖かったから。
だから離れたのに。
なんで、なんで、こんなところで。
また会ってしまうの。
「会いたくなかったのに」
喉を締め付けるような言葉が漏れてしまう。
ハヤテが問いかけるように顔を覗き込む。
「諦めたかったの。レスになって、誰かに固執して、また突き放されたくないし……今本当に頭の中がぐちゃぐちゃだから、こんな勢いで、こんなところに」
「良かったと思うけど」
「なんでそんな……」
「それともさっきのでかい金髪にめちゃくちゃにされたかった? あいつサクだろ。一回だけ見たことある。一緒にルームに入った子、歩くのもやっとな感じで相当激しいプレイしたんだろうけど。そういうの求めてんの?」
「わかんないよ……彼氏以外となんてもう四年も経ったら何を求めてたかなんて」
腰の手がそっと背中をなぞる。
温かい手のひらに、緊張が解けてく。
ハヤテは目線を導くように、ルームの扉に体を向けさせた。
「俺がさっき使ったルームは三人以上限定の広い部屋。で、こっちは中に個室が三つ並んでる。ほら、話している間にカウンターの男女が入ってったろ」
ゆあとジンだ。
案内をした男性スタッフが扉の前に立ち、二人の同意を確認してから鍵を手渡した。
残されたことらがこちらを振り向いた。
咄嗟に顔を下げてしまう。
背中の手に少しだけ力がこもった気がする。
流石にハヤテ相手に話しかけてくる気はないのか、別のテーブルに移動した。
「ナニ? あの常連になんかされた?」
「いや、ただ、ちょっと話しただけ」
「ふうん」
もし、スタッフの男性が案内をしなかったら、もしかしたら、今頃、自分がことらと一緒にルームに入っていたのだろうか。
想像してぞわっとする。
だって目の前に理想の外見の男性がいるのに、比べてしまったら、あまりにありえないから。
でもさっきまでの初心者でビクビクしていた私は、格好の獲物だったかもしれない。
今は、ハヤテの隣にいるから、誰も好奇の視線を向けてくることはない。
それもそうだよ。
相変わらず治安の悪い見かけ。
高身長に、鍛えた胸板、悪い目つきに、剃られたサイドとオールバック。
その隣に、今、立ってる。