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担当とハプバーで
第6章 墓まで連れ添う秘密たち

 ガシガシと両手で頭を掻きながら地面を見つめて、観念したようにため息を吐く。
「アイツ、オレのファン食ってんの」
「……は?」
 海外の意味のない言葉を聞いているようだった。
 全然脳まで達しない。
 有岡は苛々した口調で繰り返す。
「だから、アイツはファンにオレの身内だってバラして、色々理由つけて二人きりになって手出してんの。出禁にしてるはずなのに、スタッフがザルの日は入ってくんだよ……」
「え、まって。本当に、お父さんなんだよね」
「戸籍上はね。とっくに縁なんて切ってる」
 信じられない。
 あんなに外面が良かったのに。
 息子の活動を見守りたいって。
「でも、途中で帰ってたよ」
「好みの女がいなかったんじゃないの、知らないけど。いつも物販前にはいなくなってんだよな。葉野さんあの後まっすぐ帰ったよね?」
「え……うん」
 本当のことを言う必要なんてない。
 有岡は顎を爪でえぐるように擦り、立ち上がった。
「情報ありがと。今度見かけたらスタッフにチクって。つかステージ前に来て。くそ、母さんに報告しとこ」
 後半は独り言のように呟きながら、廊下を歩いて去っていった。
 遊び人の父から遊び人が生まれたってこと。
 他人事ながら、不躾なことを考えてしまう。
 ファンの子食い合ってるなら、好みも似てる可能性だってあるよね。
 結構好きなステージだったけど、次はやめとこうかな。
 これ以上悩みのタネなんて増やしたくない。

 終業後、電車の壁に寄りかかりながら、ハヤテのメッセージを見ては画面を消してを繰り返す。
 ぼーっとするとすぐにあの日のベッドの上に意識が飛んで行ってしまう。
 四年ぶりの他人との体験だけでも刺激が濃いのに、相手が相手だから余韻が消えるはずがない。
 私が久しぶりだからって、すごく丁寧に導いてたのも振り返るとよくわかる。
 荒い口調ひとつ使わずに。
 爪も歯も立てずに。
 なのにこっちは遠慮なく背中を引っ掻いたし、得意なテクをって……。
 絶対引かれた。
 うわ、冷静に考えると痛い。
 あそこは下手くそって言われて押し倒されとけば良かったのに。
 知らないよ、駆け引きなんか。
 こんな反省会してる時点で自分が嫌になる。
 ハヤテはどう思ったのか、全部知りたい。
 直接は絶対無理だけど。
 ああ、スタンプ……。
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