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担当とハプバーで
第6章 墓まで連れ添う秘密たち
スタンプが来ない。
月曜の二十時、タバコ休憩に非常階段で携帯を開きながら、コンコンと地面を爪先で叩く。
ガチャリとドアが開くと、赤い顔をしたタツが出てきて顔を上げた。
「飛ばしてるね、ハヤテ〜。土日は同伴とアフター両方入れてたって聞いたけど」
「お疲れ様です」
酔うとさらに口調が崩れるタツに、灰皿の前を譲って、胸元からタバコを一本差し出した。
「ありがと。メンソール強いやつ助かる。来月バースデーじゃん。今から鬼営業辛くてさあ」
「タツさん今年一億目指してんでしょ」
「そうそう。百人呼ぶ。目標だけは高くってねえ」
シャギーがかったウルフヘアは表情を半分隠しているが、その目つきだけは野望に燃えているのがわかる。
前髪の隙間からこの視線を向けられたら、何度でも通う気持ちもわからなくない。
「最近インテイス行ってます?」
「んー。最後は先々週かなあ。おじさん連れてきた子に床にワインぶちまけられてさあ、覚えてるよね」
「あれはエグかったっすね」
「で、誰か意中の子でもできたの?」
のほほんとした雰囲気のくせに、核心を突いてくるのが最速。
隣の手すりにもたれかかって、歯でタバコをくわえながらニコニコと見つめてくる。
「タツさん失敗した相手とヤれます?」
「内容によるけど」
煙を吐きながら、灰をトントンと落とす。
「好みの相手に早漏かましちゃって、リベンジしたいけど反応なしって感じ」
「役満じゃんねえ。それはもうご縁ないよ」
「容赦ねえ。ニイノさんに話しときゃ良かった」
「え、でもハヤテ長期戦タイプだったよね。よほどのテクニシャン引っ掛けた自慢?」
「まさか。元姫ですよ」
「ああ、じゃあ連絡くるよ。簡単簡単。なあんだ、レベル一の悩みだね、深刻そうに言うから引っかかっちゃった」
「タツさんみたいに依存させてるタイプじゃないんで」
「わかってないなあ。ハヤテの代替品がこの辺のホストでいるわけないのに。自信持ちな。退勤後には返信来てるよ。ああ、でもあそこ姫来るんだ。気をつけないとね。タバコごちそうさま」
一回ふかしただけで捨てていきやがった。
キシリトールガムがわりにすんなよ。
狭い夜景を見ながら、長く煙を吐く。
土日に予定を詰め込んだのは、思い出す時間を減らしたかったから。