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女の性癖、男の嗜好…(短編集)
第8章 女久美 54歳

その夜…

珍しく夫は早めに帰宅しました。

枝豆をおつまみにビールで晩酌です。

枝豆を口に放り込み、咀嚼するとビールで一気に流し込みました。

「お前…何か良いことがあったのか?」

少し酔いが回ってきたのか
私の胸を見つめながら夫はそう言った。

「ううん、いつもと変わらないなよ」

「そうかぁ?なんだか今夜のお前…色っぽいな」

若い男のエキスをたんまりと体の中に仕込んできたんですもの、
自分がまだまだ女だと気づいたせいか
きっとフェロモンがバンバン出ていたのでしょう。

「なあ…今夜辺り…久々にどうだ?」

イヤらしい触りかたで私のお尻を撫で回します。

今朝、智に痴漢された艶かしい記憶が甦る。

一期一会の会瀬…
もう彼とは二度と会うことはないかもしれないけれど、私を女として目覚めさせたことに感謝してる。

「あら、珍しい…抱いてくれるの?」

「まだまだ俺だって男だというところを
お前の体にわからせてやるよ」

『じゃあ、智に負けないほど私を逝かせてね』

私は痴漢のようにお尻を撫でる夫の手を掴まえて
そのまま寝室に引きずり込んだ。

第8章 完

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