この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
女の性癖、男の嗜好…(短編集)
第16章 美佐緒 32歳
今夜も夫は帰ってこない…
当然です。愛人の家に入り浸っているんですから。
早くフラれてしまえ!
私は心の中で悪態をつきながら
買ってきたショートケーキにろうそくを一本だけ突き刺した。
今夜は4回目の結婚記念日…
昔に「三年目の浮気」という歌が流行りましたが
うちも例に漏れず3回目の結婚記念日に夫は家を飛び出しました。
『私のどこがいけないって言うのよ』
私はおもいっきりろうそくの火を吹き消すと
ショートケーキにフォークを突き刺しました。
ケーキを頬張っていると
LINEに着信がありました。
スマホ画面には懐かしい秀樹からの連絡でした。
『あら、珍しい…』
秀樹というのは私が結婚前に二股をかけていた男です。
どちらを選ぶか悩んだ挙げ句、
生活力のある夫を選びましたが、
今にして思えば経済力がなくてもイケメンの秀樹を選んでおけば良かったと後悔の念が押し寄せてきました。
『元気?』
まるで私がフッた事などなかったかのように
今もまだ付き合っているかのようなフランクな挨拶でした。
「うん、元気…どしたの?」
『いや…どうしているのかなと思ってさ』
「どうもこうもないわよ
退屈な日々を暮らしているわ」
『そうなんだ…
俺も今、暇してるんだ
飲みに行かない?』
人妻を誘うなんてどういう神経をしてるのかしら
でも、そんなおバカなところが秀樹の良さよね…
私はしばらく考えた挙げ句「いいわよ」と返信しました。