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女の性癖、男の嗜好…(短編集)
第3章 史絵 34歳

「気をつけていってらっしゃい」

「おはよう、車に気をつけてね」

長い夏休みが終わり、
小学生たちは陽に焼けた顔真っ黒の顔で
ランドセルを背負いながら重い足取りで登校してゆく。

「今朝も暑いですねえ」

交差点の向こう側から
親しげに挨拶をしてくるのは
町内で美容店を営む山下さんだった。

私たちはPTAの見守り隊の役目で
登校する子供たちの交通安全のために交差点に立っていた。

始業時間が近づくと
児童の姿も消え、ようやく一息つけることになりました。

「9月とはいえ、まだまた暑いですよね」

ハンカチで汗を拭きながら
山下さんは私のところに駆け寄ってきました。

「ほんとうですね…汗、びっしょりになりました」

「どうですか、少しだけ喫茶店でクールダウンしませんか?」

その提案には大賛成でした。
汗もかいてしまったし、
何よりも喉が乾いてカラカラだったんですもの。

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