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女の性癖、男の嗜好…(短編集)
第3章 史絵 34歳

喫茶店の店内はエアコンが快適で
汗がスッと引いてきた。

「アイスコーヒーでいいですか?」

山下さんが私にお伺いをたてる。

「ええ、それでかまいません」

すいません!アイスコーヒーを二つお願いします!

カウンターの中のマスターに大きな声で注文を終えると、山下さんは私と向き合って少しだけ前屈みになって見つめてきた。

ほどなくしてアイスコーヒーが運ばれてきたので
山下さんはグラスを手にして「朝からのお役目、ご苦労様でした」と乾杯を求めてきた。

カチンっと軽やかな音がして二つのグラスが接触する。

「この役目も、あと半年で終わりだと思うとワクワクしますよ」

「あら?そうなんですか?
うちの子は一年生なのでPTAを終えるのにまだ五年もかかってしまいますわ」

「うん、可愛らしいお母さんですもんね
そろそろ二人目を…なんて考えているんじゃないですか?」

「そんなあ~、もう出産はこりごりだわ
それに30半ばですし…」

「えっ?そうなんですか?
僕はてっきり20代半ばだと思ってましたよ」

見えすいたお世辞だとわかっていても
やはり若く見られるのは嬉しいものです。



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