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女の性癖、男の嗜好…(短編集)
第29章 安祐美 27歳
実家の両親は何も言わなかった。
当然です。私だってそれなりの大人なんですから
自分達のことは自分達で決着を着けなければと思っていました。
「安祐美、そんな塞ぎこんでばかりだと体に毒よ
今夜から夏祭りがあるから気分転換してきなさいな」
母にお尻を叩かれて
あまり気乗りはしなかったけれど
私は独身の頃の浴衣に着替えて
気分転換を兼ねて神社の境内に行ってみました。
仲の良い家族連れ…
腕を組んで歩くカップル…
目に写るものがすべて腹立たしかった。
『バカらしい…気分転換にもなりゃしないわ』
帰ろうと神社を後にしかけたその時です。
「安祐美ちゃん?もしかしたら安祐美ちゃんじゃないの?」
呼び止められて振り向くと
すごいイケメンがとびっきりの笑顔で声を掛けてきました。
「あの…どちら様ですか?」
「やだなあ、忘れたのかい?
俺だよ洋平だよ!」
洋平?!まさか、幼稚園の時のお友達だった洋平?
うそっ!やだ!
まさか、こんなイケメンになっていたなんて…
「やっぱり安祐美ちゃんだったね
すっかりいい女になっていて最初はわからなかったよ」
「こちらこそごめんなさい
洋平ったらすごくカッコいい男になっているんだもん、わからなかったわ」
しばらくは昔を懐かしんで立ち話をしていたけれど
いつしか二人は肩を並べて歩き始めた。