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女の性癖、男の嗜好…(短編集)
第31章 倫子 30歳

「ねえ、何でも言うことを聞いてくれるんだよね?」

その日、セックスを終えて帰り支度しながら
彼はおもむろにそう言ってきました。

「ええ、何でも言ってちょうだい」

「俺さあ、温泉に行きたいんだよね」

彼は私に温泉に連れていけというんです。
もちろん費用は私もちです。

そんなお金なんてないわと拒もうものなら
「何でも言うことを聞くって言っただろ!」と
また癇癪を起こすのに決まっています。

「じゃあ…夫が出張の時にでも…」

私は彼に嫌われたくなくて
ついつい、そんなことを言ってしまったのです。

その約束は意外と早く訪れました。
急遽、夫が出張に行くことになったんです。

キャリーバッグを転がして駅に向かう夫を見送ったあと、私もボストンバッグに着替えを詰め込んで
急いで彼の待つ駅に向かいました。

私のへそくりで遊びに行くのだから
そんなに遠出は出来ません。
なので目的地は箱根温泉にしました。

近場ですけれど
彼と初めてのとお泊まり旅行なので
まるで新婚旅行に行くみたいに私の心は踊っていました。

電車に揺られながら
彼は私の耳元に口を寄せて
「なあ、お前は尻にチ○ポを入れたことがあるか?」と尋ねてきたんです。

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