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女の性癖、男の嗜好…(短編集)
第40章 夏蓮 28歳

演奏会は大盛況でした。

こんなにも小さなオーケストラなのに
マエストロとコンマスの名コンビだと
小さな記事でしたが新聞にも掲載していただきました。

- これほどまでに呼吸の合った演奏は素晴らしい! -

くすぐったくなるほどに
記事は私とマエストロの息の合った演奏を褒め称えてくれました。

呼吸が合って当然です。
だって、私たちは相手の考えていることが手に取るほどにわかり合えていたのですから。

「君のような演奏家と夫婦でいられることを誇りに思うよ」

不倫しているとは思いもせずに
夫も私が演奏家として復帰したことを我が事のように喜んでくれました。

「彼(マエストロ)と組めば大ホールでの演奏も夢ではないかもしれないわね」

「う~ん…どうかなぁ…
噂では大きな管弦楽団に引き抜かれるということだよ」

「え~!そんなのいやよ!!」

「その時は僕がマエストロに立候補しようと思うんだ」

「あなたが!?」

なんだい、不服なのかい?

不満はないけど
夫がマエストロならお互いに知りすぎていて
私、コンマスとして成長できないような気がして
頬を膨らませてガッカリしてしまいました。

第40章 完

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