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女の性癖、男の嗜好…(短編集)
第43章 有紀 38歳

もちろん、夫に関してはそんなことにはならないと思いますが、
二週間近くも二人だけで東京を離れて取材旅行に行かれてしまうと、目が離れたところでは何が起きるのか予想もできません。

なので私の心は数日前からかなり荒んでいました。

「編集長、校正が終わりました」

大泉に声を掛けられて
私のよからぬ思考はストップされました。

「そう、ご苦労様…
もう終電もないし車で送るわ」

タクシーで帰りますから結構ですと
私の申し出を断る大泉でしたが
どうせ後で必要経費ですからと会社に負担を掛けることになるとは思ってもいないようです。

「遠慮しないでいいの、送ると言っているんだから従いなさい」

私は大泉を強引に車に乗り込ませました。

「大丈夫ですか、遅くさせてしまって申し訳ありません。
あ、ここです、このマンションです」

家に着くと居眠り運転などしては危ないからと
大泉は私を部屋に招いてコーヒーを飲んでいけと言います。
遠慮するわと言いましたが、
是非とも部屋に招きたいと大泉は強引に私の腕を掴んだ。
普段は意識しなかったけれど
やはり彼も男なので、そのゴツゴツした指に驚かされてしまう。

久しぶりに若い男に腕を掴まれて、ドキドキしてしまう年増女の私でした…

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