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第47章 菜月　32歳

すごい人混みで買い物どころではない。

近くにショッピングモールがオープンしたので
暇つぶしに買い物に来たのは良いけれど
車を駐車するだけで一時間も待たされ
ようやく店内に足を踏み入れれば
どこかのテーマパークかと見間違うほどの混雑でした。

「あなた、これじゃウィンドショッピングも出来ないわ」

「ほんとだな…
まあ、数ヵ月もすればみんな飽きて店内も空くだろうから、その時にまた来ようか…」

人の熱気に酔いそうになってきたので
私たちはそそくさと帰ろうとしました。

そんな時です、背後から「菜月？」と呼び止められたのです。
どこか聞き覚えのある声でしたので
振り返ってみると岡本くんと美子ちゃんでした。

私と夫、そして岡本くんと美子ちゃん
この四人は大学の同期でゼミが一緒でしたので
在学中は、よく四人で遊びに出掛けていました。

いわゆるグループ交際で
卒業後、私は夫と結ばれ
風の便りでは岡本くんと美子ちゃんが結婚したことを知りました。

「久しぶりだなあ」

岡本くんは当時のままの好青年でした。
美子ちゃんと二人並んでいると
ホントにお似合いの仲良し夫婦です。

「10年ぶりかしら？」

美子ちゃんも懐かしがって私にハグしてきます。

三十路になったとはいえ
こんな風にじゃれ合うと当時に戻った気がしました。