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淫魔の宿へようこそ
第1章 プロローグ
昔昔あるところに、インキュバスとサキュバスの恋人同士がおりました。
通常、人間の精を主な糧とする彼らには、そういった組み合わせなど有り得ないことです。
けれども幼い頃から近くに住み、いつも一緒にいた二人にとって、お互いの存在はかけがえのないものでした。
成長して愛し合うようになり、彼らの想いは種族の不文律さえ変えるほどのものとなりました。
二人は人の精を必要としなくなったのです。
「あ…ああっ…ねえ、私は…こんなにも幸せなのに、贅沢なのかしら…?」
行為の最中で彼女が話し始めたので、彼は横から突いていた動きを緩めました。
ぬっ、ぬぬっ…と彼女の浅い内部をじっくり味わう動きにシフトします。
甘やかなため息と共に、サキュバス独特の美しい銀糸の長い髪が彼の目を細めさせ、そんなものを眺めているだけでも彼の欲望はちっとも萎えそうにありません。
「君に何か望みがあるの?」
「いつかね、いつか……貴方との子供が欲しい」
けれどもそれは無理難題にも等しいことでした。
「僕らは……悪魔なんだよ」
確かにインキュバスやサキュバスといった悪魔は魔界の卵から生まれるものです。
「言い伝えがあるわ。 千年人間界に住むと悪魔は人になれると。 私達は千年愛し合って、家族を作り、生を終えるの。 それはとても素敵なことだと思わなくて?」
正直、彼には理解出来ませんでした。
人間はあくまで自分たち種族にとっては被食者。
そんな、より弱い存在になりたいなどという彼女の考えが。