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淫魔の宿へようこそ
第5章 情動の意味
それから一ヶ月あまりが経ちました。
その間もぽつぽつとお客様はホテルに訪ねてきました。
それはやはり人とは違う風変わりなお客様ばかりでしたが、ほぼ全員がドルードの知り合いだったのもあり、ニコルにとってはもはやさして気にもならなくなっていました。
どうも男性に対して意識してしまう以外は。
お客様は食事だけの人もいれば、宿泊する人もいました。
このホテルには料理に関する本などが豊富にあったため、ニコルは存分に腕を振るうことが出来ました。
お客様が来ない日にはドルードやマエロを巻き込んで試食会を開きました。
たまに少し失敗してしまった際には、正直に渋い顔をするマエロに落ち込み、
「大体、マエロ。 君の料理の腕は壊滅的じゃないか」
ニコルはいつかマエロが歯切れ悪くそんなことを言っていたことを思い出しました。
そして笑いながら気を使って悪くないよ、と慰めてくれるドルードの優しさに癒されました。
今晩もまた、エビルやマエロはせっせと働いています。
ニコルもいつものように厨房に立っていました。
ここでの仕事も今ではすっかり慣れたものです。
「エビ郎さん、スープの火を止めてくれますか?」
「エビ太さん、ストーブの火加減を200度に変えてもらえます?」
「エビ子さん、そこのお皿にパセリの葉をおいてもらえますか?」
ニコルはエビル一人ひとりに名前をつけることにしました。
どうやら彼らにも性別や違いはあるらしく、間違うと不機嫌そうな表情をして拗ねてしまいます。
それからしばらくはそっぽを向いたまま動いてくれないのですから困ったものです。
ですのでニコルはそうならないように、それぞれ微妙に異なる、エビルの違いを眉の長さや鼻の高さで見分けることが出来るように頑張りました。